名古屋地方裁判所 昭和41年(行ウ)30号 判決 1967年2月18日
原告 カスミ自動車合資会社
被告 名古屋陸運局長
訴訟代理人 川本権祐 外四名
主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 <省略>
理由
まず被告の本案前の答弁について判断する。
原告の本訴請求は要するに、被告が訴外会社に対し、原告が使用権限を有する本件土地を自動車分解整備事業の事業場所在地としてなした本件認証は違法であるところ、訴外会社が本件認証を受けたことを理由として、本件土地に不法に侵入し、自動車分解整備事業を経営して、原告の権利を侵外しているから、本件認証の取消を求めるものであるというにある。
ところで、自動車運送車両法にもとづく自動車分解整備事業の認証は自動車分解整備事業を経営しようとする者の申請にもとづき、その申請者が法定の基準に適合する場合に、適法に自動車分解整備事業を経営することを得させることを内容とする行政処分である。即ち、右認証は公法上の関係において、自動車分解整備事業を経営することの一般的な禁止を解除し、適法にこれを行なうことを得させるにとどまるのであつて、私法上、これによつて、その認証を受けた者が、当該事業場にあてるべき土地の使用権限の設定を受けるなど、その土地について、私法上のいかなる権利を取得するものでもない。
従つて、訴外会社が被告より本件認証を受けたことを理由として、原告の使用権限を有する本件土地に不法に侵入し、自動車分解整備事業を経営するに至つたため、訴外会社との間において、本件土地の使用権限につき、紛争が生じたとしても、それはあくまで、私法上の紛争関係として、原告と訴外会社との間で解決されるべきものであつて、本件認証の存否または適否いかんに関しないところであるといわなければならない(原告が訴外会社に対し、別に本件土地の明渡請求訴訟を提起中であることは、原告の自認するところである)。
よつて、原告は本件認証の取消を求めるにつき、法律上の利益を有しないのであるから、すすんで本案について判断するまでもなく、本件訴訟を不適法として却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 山田正武 井野三郎 林輝)